倫理綱領
この文書は技術者としての行動規範です。開発に参画する開発者は、以下の信義誠実義務を履行します。
顧客利益を第一に、行動判断する
法令、信義則、社会規範への違反がない限り、開発者は顧客利益を第一に考え行動します。
開発者には、役割に応じた大小の技術的裁量が与えられます。この時、開発者は特に以下の2点に注意を払い、その裁量を行使します。
内発的な積極性を顧客利益に優先しない
技術的興味やキャリア形成などの、「個人的関心」を動機の一部に含む決定には、注意を払います。
この点、開発者個人の技術研鑽、モチベーション維持の面からも、内発的な動機自体は尊重し、開発への好影響を期待します。ただし技術的な意思決定は、それが常に顧客利益において最善であると信じ行われるか、またはトレードオフについて十分な説明をした上で行われるものとします。
また意思決定者個人が意識するだけでなく、レビューなどを通し相互的にチェックすることで、開発組織として顧客利益の優先を維持します。
内発的な消極性を顧客利益に優先しない
解決にリスクや困難の伴う問題や、手間のかかる問題、また直接的な評価に繋がりにくい課題などに対して、開発者は消極的になる傾向があります。
この点、ビジネス上優先すべき他の問題がある場合や、慎重な対応が求められる場合も確かに存在します。一方で、闇雲に問題を先送りにすることは、中・長期的な顧客利益を損なう可能性があります。そこで開発者は、これらの問題に対しても積極的に取り組む姿勢を持ち、例え問題を先送りにする場合にも、それが顧客利益において最善であると信じ行うものとします。
また意思決定者個人が意識するだけでなく、レビューなどを通し相互的にチェックすることで、開発組織として顧客利益の優先を維持します。
真実性を確保し、客観性を持って説明する
開発者は、非技術者から技術的な説明を求められることがあります。ただ非技術者は、その説明の真贋を判断することができません。残念ながらこれをいいことに、開発者が自身の都合の良いように説明を歪曲することがあります。これは避けられねばなりません。
例えば自身の過失により問題が起きた時、見なかったことにする、深く追いかけないようにする、主観的に被害を矮小化する、といった気の迷いが頭をよぎることがあります。開発者は、このような心の動きに毅然と立ち向かい、真実性を確保し、客観性を持って説明します。
もちろん、問題が深刻であればあるほど、複数の技術者が問題に取り組み、相互監視による不正防止効果が期待されますが、そうでなくとも、技術者は公正に業務を執行します。
トラブルの一切の責任は経営者にあり、また開発者には個人的なペナルティが課されません。開発者は安心して、技術者としてのプライドと良心から行動します。
守秘義務を遵守し、秘密情報の保護に努める
開発者は、自身に守秘義務が課されるだけでなく、開発案件における秘密情報の保全も求められます。情報漏洩が企業の存続に影響するほどのリスクとなって久しい現在、これは「重責」と言って過言ではありません。
もちろん、このガイドラインにおいては、そのような「重責」を開発者個人に求めるのではなく、組織の責任と位置付け、決め事や手続きなどの仕組み化を以って、リスク軽減に努めていきます。
しかしその「仕組み化」はしばしば利便性とのトレードオフになり、開発効率とのバランスを考慮の上、一定の妥協を許容します。そしてこの妥協は、しばしば開発者個人への信頼を前提とするものとなります。
繰り返しとなりますが、トラブルの一切の責任は経営者にあり、開発者には個人的なペナルティは課されません。開発者はこの点に不安を持つ必要はありませんが、守秘義務や秘密情報保護の重要性をよく理解し、慢心することなく慎重な対応を常に心がけ、情報漏洩事故の防止に努めることを要求します。
多様性や個性を尊重し、礼節を以って協働する
開発者は、多様なバックグラウンドを持つ人々と協働します。如何なる場合であっても人種、国籍、性的嗜好、宗教、政治的信条、身体的特徴、年齢、障害の有無、その他の属性に基づく差別は許されません。
またソフトウェア開発は頭脳労働であり、共同作業です。時には、考えに考え抜いたコードが、否定的にレビューされることもあります。またスケジュールに追われたり、疲労困憊であったり、常に上機嫌でいられるわけでもありません。
ある程度の衝突は避けられないとしても、そのような時も開発者は、礼節を持ったコミュニケーションと建設的な議論を心がけます。どんな人も、家に帰れば自慢の息子や娘であり、自慢の夫や妻、自慢の父親や母親かもしれません。ビジネスや技術を超えて傷つけられていいはずがありません。
心身の健康を損なう事態は、直ちに解消する
ソフトウェア開発は、時に過酷です。無理のないプランニングや適切なスケジュール管理が行われても、開発者は緊急対応に急かされたり、長時間の対応で疲労困憊になることもあります。
このような状態が続くと、心身の健康を損なう事態に発展する可能性があります。経営者には適正な労働環境を整備する責任があるため、このような事態を解消するための措置を講じます。
一方で開発者自身も、自身と周囲の心身の健康に対し、日頃から十分な配慮を行うことを求めます。具体的には、自身や周囲の健康状態を注視し、異変や不調がある場合には早めに相談します。配置変更や欠員補充、計画変更の責任は経営者が担うものですので、開発者は安心して管理者に相談してください。